まつりの呼吸 ⑤

メビウスの輪

現代は意識によって作られる社会がどれほど管理社会となるかを教えてくれています。管理社会の特徴は人間を個人としてではなく数として見ること、データの一部として見ること、つまりは情報として見ることです。医者が患者を診ずにパソコンだけを見て対応するように、また、核もミサイルもボタンひとつ押すことで大量虐殺ができることなどが顕著な例です。

それぞれの分野において管理する者は人間の行動と欲望を数値化しグラフ化し、そして分析して未来を予測して網を張るのです。管理する者もされる者もビッグデータが示す未来に誘い込まれていきます。物事をコントロールして管理するという意識の働きは自らをコントロールされる側に招き入れてしまいました。別の言い方をすれば、人間は身体ごと脳の中に潜り込んでしまったのです。意識を使って圧倒的な自然の力から脱出を試みた結果、意識そのものが幽閉先だったとは。

こうしたメビウスの輪的構図はある種普遍的です。安全神話の原発が住むことさえできない土地に変えてしまったように、便利快適を追求して成長する文明はブーメランのように軌道を反転させて破壊の矛先を人間社会に向けました。ターニングポイントとなる現代、人々は自分の背に火の粉が迫っているかの如く走っています。とても脅迫的な時代になったと思います。私たちは攻めているのか逃げているのか、どちらなのかわからない地点にいます。右往左往しています。寄せる波は何を黙示し、返す波は何を残そうとしているのかわかりません。でも、本来人類とはそういう生き物なんだと私は思います。

そこに無理矢理意味を見出そうとする営為が文化なのです。文化がエキサイティングな行為として継承されてきたのは、自然性に対する反逆を通して矛盾、葛藤、摩擦を活かし進化するためにあります。ひとつではないものをひとつにしようとする意識の道行きは傷だらけなんです。それを悲劇と言います。

自然は相反するエネルギーが共存します。そして、私たちも生きつつ死に向かっていく生物です。生と死が同時進行に行われている生物の宿命の中にあるということです。生と死を分けないと考えられない意識の機能は頭と身体を見事に分けてしまいました。「私は身体を持っている」的な発想が定着する。身体をコントロールする脳が主役の座に着きます。ひとつの脳は各器官各組織と絶妙な連携をとりながら生命を維持しますが、同時に外から操作し改変する術を見つけました。現代医学に通じる道です。医学も実験データの集積から発展します。今日のデータ化はすでに古代から始まっていたのです。

三鷹 整体治療院「からだはうす」

1984年心身のメカニズムを探求する場として「からだはうす」を開設。 整体治療による施術を中心に呼吸法、ヨガ、ストレッチを通して、心身の不調改善の作業と共に取り組んでいます。 精神的不調については随時カウンセリングを行います。

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