2024 戸隠参詣神殿舞踏　その4

楽人の飽田さんも到着し、あすかのジャンべと本番さながらのウォーミングアップは休むことなく境内を震わせていた。その集中力と体力には驚かされた。自前の灯籠の位置も決まった。この灯籠は孟宗竹をくり抜いて土(地)、火、水、風、雷、光の文字が浮かぶように作られたからだはうすと神殿舞踏のシンボルである。

土(地)、火、水、風、雷、光の意味は深い。地球に登場した全ての生命体はこれらの自然エネルギーによって誕生した。古来より神々の象徴でもあった。土(地)、火、水、風、雷、光の自然原素から栄養を摂り、時には癒され、現代では電脳社会を支える発電所に姿を変えている。しかも、近年の気候変動(これを記しているこの瞬間も、日本中が台風10号の猛威に晒されている)も、土(地)、火、水、風、雷、光の破壊力を示している。僕は、この自然エネルギーの万能性に敬意を示さずにはいられないのだ。そんな思い入れから、舞踏公演の時は必ず灯籠を設置するようになった。

夕暮れも徐々に濃くなって開演の時が近づく。舞人は塗りに入り、神職のお祓い、法螺貝が合図となって幕が開く。初めてM女史をオープニングに指名したが、本殿の陰から見たその踊る姿はなかなか美しかったと思う。僕はと言えば、どうも昨年から火之御子社の舞台に踊りにくさを感じてきている。何故かというと、膝関節に支障を抱えているので、あの不揃いな石段に微妙な恐怖を身体が感じているようなのだ。日常的にも階段を降りる時は毎度注意力を働かせている。加えて今回は舞台の代わりに設えたパレットを覆った毛布に足を取られる場面が幾度となくあった。本格的に身体を刷新しなければまずいなあと、それが自らの踊りの印象である。今回は飽田さんがギターを持ってきてて、これがちょっとポップな調子で続き、無音もなく、メリハリに欠けた感があった。

簾を用いた踊りの印象はどうであったろう。昔と違って奉納舞踏そのものに対して感情的にリアクションする人がいないのはちと寂しいけど、皆が非日常性に慣れてきたからだとも思える。或いは、神殿舞踏を年3度も自然の中で踊るようになったので、かつての非日常はほぼ日常と言えるような状態に僕たち自身が変化してるのかもしれない。

幕が降りたら毎度の怒涛の撤収。機材やら何やら全て境内の隅に重ね、ブルーシートをかけて宿に直行。バーベキューとビールでそれぞれの労を労う。毎回、夜の10時近くからの食事を快く引き受けてくれる「ぴあろっきー」には本当に感謝しかない。

食事も宴も毎度、公演のシェアも毎度で、特記すべきこともなく、とにかくスムーズに事が運んだことが、逆に特記すべきことだ、みたいな感想。いやはや、好天と慣れが組み合わさるとこうなるのか！宴の後はそれぞれ自由に就寝する者、公演のビデオ鑑賞する者、月下を散策する者に散っていく。

3日目、朝食後、火之御子社の荷物を宿に運び、掃除して整理、車に詰め込む。雨がないので早々に終了。中社にお詣りする。だが、鳥居に差しかかる手前で「虹だ！」と大きな声がする。振り返ればSちゃんが空を指して叫んでいた。皆一斉に空を仰ぐ。見れば、白く輝く太陽を囲んで微かに二重の輪の虹が架かっているではないか。日輪ならぬ虹輪である。記念すべき、にじゅうねん(20年)と、にじ(虹)と、にじゅう(二重)、平仮名にすると「にじ」が三つ重なる。今回の戸隠参詣のクライマックスはこの瞬間に収まった。人には知られずとも天は見ている。こうして僕の人生行脚の確信はまた一段と強まったのである。

興奮そのままに中社参拝、火之御子社のお札を新しくして山口屋でお土産を漁る。それからキャンプ場の白樺食堂へ。しかし、ここでハプニング！車を降りて歩き出した前方でバイクの下敷きになっている人がいる。見ればNでちゃんではないか。数人が駆け寄りバイクを起こす。それでなくても腰が悪いNでちゃん。みんなが心配する中、立ち上がったNでちゃんは「大丈夫！」と強がる。その後もいろいろあったのだが、 Nでちゃんの名誉のために端折る。後日、鎖骨が折れていたという連絡あり。

という訳で、白樺食堂のサービスに大満足の面々は一路下界に向かう。帰路、N村号は何度か迷路に嵌るというおまけ付き。しかし、今回の「痙攣」のチラシの雷模様の意義は最終盤に訪れた。長野を離れると雲行きが怪しくなってきた。高速道を下る間の雨、そして、関東平野に突入してからは神鳴りと神成りと稲妻と雷光の凄まじくも見事な饗宴(競演)に見送られ(迎えられ？)たのであった。なんと完璧なフィナーレ！物語はこうして作られていく。ということで、顛末記終了いたします。

今年もご一緒してくれた皆さん有難うございました。そして、お疲れさまでした。来年もよろしくお願い致します。　　合掌